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「地方」と性的マイノリティ
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「進んでいる東京/遅れている地方」は本当なのだろうか。
日本の性的マイノリティと「地方」を研究テーマとする初の書籍。
全国でおこなわれている「同性婚」訴訟や自治体のパートナーシップ認定制度、差別禁止を目的とした法整備に関する議論など、性的マイノリティをめぐる社会的な動きは近年ますます活性化している。
活性化した背景には、当事者が中心になり立ち上げた勉強会や交流会、セミナーやシンポジウム、政策提言、プライドパレードなど、 さまざまな団体が長年おこなってきた市民運動がある。そうした活動は東京などの大都市が中心と見られ、「地方は遅れている」という一面的な見方をされる場合も多いが、はたして本当にそうだろうか。実際に地方で活動する性的マイノリティ団体のスタッフたちは、地域性や自分たちの活動をどのように考えているのだろうか。
東北6県の19団体・23人のインタビューからは、「都市」/「地方」という単純な二項対立では捉えられない多様な実態が見えてきた。地域の実情に応じた活動手法、自分が生まれ育った「地元」で活動することへの思いと葛藤。「露出」することやメディアに対する柔軟な考え方。2011年の東日本大震災以前から続く、厚い活動の蓄積。そして震災が東北の団体の活動に与えた影響……。
いままでのセクシュアリティ研究で見過ごされてきた「地方」の実態を、当事者・団体スタッフたちの豊富な語りから考察し、性的マイノリティをめぐる政治と地域性についての新たな見取り図を提示する。
目次
まえがき 前川直哉
序 章 本書の構成と「東北調査」 前川直哉/杉浦郁子
1 本書の目的と構成
2 東北調査について
第1部 東北の性的マイノリティ団体
第1章 概要と歴史 前川直哉
1 東北の性的マイノリティ団体の概要
2 東北の性的マイノリティ団体の歩み
第2章 「地元」と活動 前川直哉
1 「地元」で活動するということ
2 イベントとクローゼット
3 地域で情報をどう発信するか
4 「東北は保守的」は本当か
第3章 「LGBT」内部の差異とジェンダー 前川直哉
1 活動とゲイ男性
2 ジェンダー不平等という課題
3 「必要に駆られて」活動するトランスジェンダー
コラム1 インターネットと紙メディア 前川直哉
第4章 東日本大震災とその影響 前川直哉
1 東日本大震災と性的マイノリティ
2 震災後の交流、団体間の協働
3 東北の経験から学ぶために
第2部 「地方」と活動手法
第5章 「露出」の期待に対処する――「地方」の視点から可視性の政治を問いなおす 杉浦郁子
1 可視性の政治に埋め込まれたメトロノーマティヴィティ
2 「露出」を管理する実践
3 「露出」を前提にしない実践
4 「カミングアウト/クローゼット」の二項対立を攪乱する
第6章 「奇妙な他人」を「身近な隣人」へ変える――意識啓発活動のイメージ管理 杉浦郁子
1 「地方」の承認の政治が置かれている文脈
2 「身近な人になる」実践
3 「身近な地域住民」としてのイメージ管理で得られるもの
第7章 街の通りに出ていく――地域における「アウト」な活動 杉浦郁子
1 パレードの政治的意義をめぐる議論
2 活動の拠点を移す――青森へ
3 コミュニティカフェ&バーそらにじをオープン
4 青森レインボーパレードを開催
第8章 地域の「アライ」と協働する――性的マイノリティとダイバーシティ 杉浦郁子
1 「ダイバーシティ推進」の収益化
2 ダイバーシティふくしまの活動
3 ダイバーシティこおりやまの活動
コラム2 ろうLGBT東北(DEAF LGBT TOHOKU)――「聞こえるLGBT」が「聞こえないLGBT」のバリアに出合う 杉浦郁子
あとがき 杉浦郁子
著者プロフィール
杉浦 郁子 (スギウラ イクコ) (著)
和光大学現代人間学部教授。専攻は社会学、ジェンダー/セクシュアリティ研究。共著に『クィア・スタディーズをひらく1』(晃洋書房)、『排除と差別の社会学 新版』(有斐閣)、『現場から創る社会学理論』(ミネルヴァ書房)など。
前川 直哉 (マエカワ ナオヤ) (著)
福島大学教育推進機構准教授。専攻は社会学、ジェンダー/セクシュアリティ研究、教育学。著書に『〈男性同性愛者〉の社会史』(作品社)、『男の絆』(筑摩書房)、共著に『「テレビは見ない」というけれど』(青弓社)など。
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