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ホワイト・フェミニズムを解体する

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中流以上の白人女性を主たる対象としたホワイト・フェミニズムの陰で、有色人種やトランスジェンダーなどのインターセクショナル・フェミニストが既存の社会構造に連帯して立ち向かうことを提唱してきた。本書では、両者の議論を取り上げてフェミニズムの思想史を捉え直す。


目次

 本書に寄せて

序章 フェミニストの断層線

第一部 文明化

第一章 女性の権利とは白人の権利なのか?――エリザベス・ケイディ・スタントンとフランシス・E・W・ハーパー
第二章 白人の同情対黒人の自己決定――ハリエット・ビーチャー・ストウとハリエット・ジェイコブズ
第三章 入植者の母親と先住民の孤児――アリス・フレッチャーとジトカラ・サ

第二部 浄化

第四章 優良な国家を産む――マーガレット・サンガーとドクター・ドロシー・フェレビー
第五章 フェミニズムを路上へ――パウリ・マレーとベティ・フリーダン
第六章 TERFの門番とトランス・フェミニストの地平――ジャニス・レイモンドとサンディ・ストーン

第三部 最適化

第七章 リーン・インか連携か――シェリル・サンドバーグとアレクサンドリア・オカシオ=コルテス
結論 ふたつのフェミニズム、ひとつの未来

 謝辞
 監訳者解説
 原注


前書きなど

本書に寄せて

 黒人フェミニストの教師で著述家でもあるわたしがこれまでに直面した最大の課題のひとつは、フェミニズムは生活と密接な関係にあるということを黒人女性に納得させることだった。フェミニストの政治学や理念に対する黒人女性の抵抗感は、ジェンダー平等に対する抵抗感とはまったく異なっている。わたしたちは家父長制の構造がもたらす強い影響を受けながら日々生活しているが、黒人女性がフェミニズムの旗を掲げるまでの道のりで最大の障害となってきたのは白人女性だ。たとえば、人種も宗教上の信条も無視して、わたしたちはみな「女性として」団結する必要があると語る白人女性がどこかにひとりいるとしたら、その白人女性を横目で眺める黒人女性もきっとどこかにいる。
 人種をまたいだフェミニストの連帯に白人女性がたびたび突きつける課題を考えるとき、その脅威の性質を明確にすればするほど、問題に対処する態勢を整えやすくなる。カイラ・シュラーの手になる本書は、自信と博識と卓越した展開によってこの難題に真正面から取り組んでいる。シュラーはなにが問題かをあきらかにする。すなわち、「白人フェミニストの政治学が抱える問題点は、それがなにに対処できず、だれを排除しているかではない。ホワイト・フェミニズムの問題点とは、それがなにをおこない、だれを抑圧しているかである」と。これは白人女性が社会で役立たないという意味でも、フェミニストが世界を創造するうえで白人女性が有能な盟友になれないという意味でもない。問題はむしろホワイト・フェミニズムにある。すべての女性が直面する不公平に対処するためのホワイト・フェミニズムの方法論がはなはだしく制約されているということなのだ。
 本書『ホワイト・フェミニズムを解体する』は著者の深い学識と、ソーシャル・メディアでフェミニスト間の争いを生む現象に切実に必要な、歴史的見地に立った検証のたまものである。カイラ・シュラーの署名代わりといえるほど周知された手法――アーカイブの広範で深遠な理解に基づくテキストの豊富な分析――がここに示されている。
 シュラーは、参政権を求めるエリザベス・ケイディ・スタントンの戦いを特徴づけた恥ずべきレイシズムの請願を手始めに、数世代にわたるホワイト・フェミニズムの起源を追う。わたしはこの歴史の学びの途中にある者だが、白人女性の参政権を得るために黒人男性を犠牲にすることを厭わなかったスタントンの執拗さにはさすがに困惑した。当時の典型的なレイシストによる自由取引をおこなったわけだから。シュラーはさらに、マーガレット・サンガー、ベティ・フリーダン、シェリル・サンドバーグといった面々に共通するホワイト・フェミニスト・ポリティクスの変遷も提示してみせる。シュラーの見事なところは、白人の無用の罪悪感の特質たるリベラルな自責の念の類いに果敢に抗い、白人女性の涙を無効にして、涙にしばしばつきものの安心と慰めと空間の占有を拒否しているところだ。
 アメリカ合衆国のジェンダー研究を率いる学者、もっと率直にいえば、わたしが読みたいと素直に思える贔屓の学者であるシュラーは、本書において白人女性の思想家をひとりずつ、同世代の黒人女性や先住民女性、あるいはラテンアメリカ系女性やトランス女性とペアを組ませて検証していく。そうするなかでシュラーは、シスジェンダーの白人女性がフェミニズムを発案したのではなく、プロジェクトとしてのホワイト・フェミニズムの大部分は、その最終目標に疑問を投げかける黒人女性、先住民女性、トランス女性の功績を取り入れないことを前提としてきたという事実をわたしたちに思い出させる。白人フェミニストが立てた戦術についてはいうまでもない。わたしたちがその場に存在しなかったのではない。白人女性が耳を傾けようとしなかったのだ。
 本書はそのことを白人女性に認めさせたい黒人女性に代わって役目を果たしてくれるだろう。どうすれば今よりよくなるかと絶えずわたしに尋ねる白人女性にはこう言おう。ここから始めなさいと。

 (…後略…)


著者プロフィール

カイラ・シュラー (カイラ シュラー) (著)
ラトガーズ大学ニューブランズウィック校女性・ジェンダー・セクシュアリティ研究科准教授。スタンフォード大学人文科学センターおよびアメリカ諸学会評議員会より特別研究員奨励費を受けた。北米、ヨーロッパ各地で講演をおこなっている。《ネイション》誌で特集が組まれたほか、《ランパス》、《ロサンゼルス・レビュー・オブ・ブックス》、《アヴィッドリー》などの雑誌にも寄稿している。著書に『The Biopolitics of Feeling:Race,Sex,and Science in the Nineteenth Century』(Duke University Press、2018年)がある。

飯野 由里子 (イイノ ユリコ) (監訳)
東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センター特任准教授。一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェ運営委員。専門はフェミニズム・ディスアビリティ研究。主な著書に『レズビアンである〈わたしたち〉のストーリー』(生活書院、2008年)、『合理的配慮:対話を開く 対話が拓く』(有斐閣、2016年;共著)、『「社会」を扱う新たなモード:「障害の社会モデル」の使い方』(生活書院、2022年;共著)、『ポリティカル・コレクトネスからどこへ』(有斐閣、2022年;共著)などがある。

川副 智子 (カワゾエ トモコ) (訳)
早稲田大学文学部卒業。翻訳家。訳書に『西太后秘録』(講談社)、『紙の世界史』(徳間書店)、『ナポレオンを咬んだパグ、死を嘆く猫』(原書房)、『ビール・ストリートの恋人たち』(早川書房)、『SMALL GREAT THINGS 小さくても偉大なこと』(ポプラ社)、『皮肉な終幕』(扶桑社)など。

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